NEAR-シューメーカー探査機、2月に小惑星エロスへの着陸に挑戦

【2001年1月9日】

NASAは、小惑星エロスを周回探査中のNEAR-シューメーカー探査機の最後の任務として、エロスへの着陸を試みることを決定した。

2000年2月14日に初の小惑星を巡る人工衛星となったNEARは、小惑星エロスを巡りながら、さまざまな高度からの探査活動を行ない、無数のクレーターと岩に覆われたその荒涼とした地肌のようすを明らかにしてきた。NEARがこれまでに地球に送り届けた画像は、150,000枚以上にのぼる。小惑星は、太陽系の原材料の残余物であるといわれ、その探査は太陽系の形成過程を探る上で重要な意味を持つ。

予定された任務期間の終わりが近づいたNEARは、燃料も運用費も残り少ない。そしてすでに当初の目標は完璧に達成しており、今はボーナスミッションとしてエロスをより低空から撮像することに取り組んでいる。NEARは2000年10月末には、エロス表面から5.3キロメートルの超低空を通過し、多くの貴重な画像を得ることに成功した。NEARは今度は1月24日〜28日にかけてさらなる低空通過を試みる。その際の最低高度は、エロス表面からわずか2.5キロメートルと見積もられている。

そしてフィナーレは2月12日。NEARはエロスへの着陸を試みる。NEARは着陸機として設計された探査機ではないため、衝撃に対しては脆弱だが、うまくエロス表面への接触直前にエンジンの制動噴射を行ない、降下速度を毎秒6メートル以下にまで下げることができれば、NEARは接地の際に壊れない可能性があり、そしていったんバウンドした後に最後のデータを地球に送り届け、その後静かにエロス表面に接地してその任務を完了することになる。

だが、成功の可能性はわずかだ。NEARミッションの責任者であるBob Farquhar氏によると、成功の可能性は1%以下であるという。ビーナッツ状のいびつな形状をしたエロスの重力場は複雑であり、正確に着陸機を制御することは困難を極める。NEARはこれまでの探査からエロスの重力場をかなり詳細に明らかにしているとはいえ、不確かな要素は大きく、軟着陸の成功にはかなりの運が必要だ。

しかし、軟着陸にの成否に関わらず、少なくとも、貴重な超クローズアップ画像を多数得ることはできるだろう。Farquhar氏によると、それこそが、この最後の試みの最大の目的なのだという。そして、「たとえNEARが衝撃で壊れてしまった場合でも、小惑星への歴史的な初着陸であることには間違いない。」ということだ。