21世紀初の肉眼彗星か

【2000年12月29日 国立天文台天文ニュース (405) (2000.12.28)】

11月に発見された彗星が、1年後の2001年暮れから2002年始めにかけて明るくなり、目で見える可能性もあります。21世紀初の肉眼彗星になるかもしれません。

これまでもたくさんの彗星を発見しているリンカーン研究所チームは、ニューメキシコ州にある口径1メートルの望遠鏡による観測で、11月16日、カシオペヤ座ベータ星の近くに、異常な動きを見せる18等の新天体を発見しました。見かけから、この天体には、2000 WM1という小惑星としての認識符号が付けられました。しかし、ホプキンス山にあるスミソニアン天体物理観測所の1.2メートル望遠鏡で12月20日にスパー (Spahr,T.B.)が観測したところでは、直径10秒のコマと、10〜20秒の長さのかすかな尾が認められ、彗星であることが確認されました。それにしたがって、符号はC/2000 WM1 (LINEAR)と変えられました。通称はリニア彗星です。

これまでの観測に基づいて定めた暫定放物線軌道により計算しますと、こりリニア彗星は1年後の2001年暮れから2002年初めにかけて4等くらいにまで明るくなり、空の暗いところならなんとか肉眼で見える明るさに達する可能性があります。したがって、21世紀の最初の肉眼彗星になるのではないかいわれるのです。もちろん彗星の明るさの予測はあまり当てにならず、しばしば期待外れに終わることを忘れてはなりません。

ただし、もっとも明るくなる2002年1月半ばにはこの彗星は南天に遠ざかって、日本からの観測は困難です。日本では、むしろ2001年11月いっぱいが観測の好機で、おうし座を南下する姿を6等くらいの明るさで捕らえることができそうです。なお、MPECによる暫定軌道は以下のとおりです。位置予報は、軌道が確実になってからお知らせします。

近日点通過時刻2002年1月22.7781日TT 近日点引数276゚.8165
近日点距離0.554808 AU 昇交点黄経237゚.8924 (2000.0)
離 心 率1.0 軌道傾斜角 72゚.5589

<参照>

お知らせ:2000年の国立天文台・天文ニュースの発行は今回の (405) (406) で終わります。2001年は1月11日から発行の予定です。