すばる望遠鏡、新銀河団を発見

【2000年11月16日 国立天文台ニュース(393)

 ハワイ、マウナケア山頂にある国立天文台の「すばる望遠鏡」の関係者は、その主焦点カメラによる観測で、これまで未発見の銀河団の存在に気付きました。 これは広視野に対する「すばる望遠鏡」の主焦点カメラの性能を十分に示したものといえましょう。

 「すばる望遠鏡」の主焦点カメラ(Suprime-Cam)は、ほぼ満月の大きさに当たる、角度で24分四方の範囲を、大きな集光力と高い分解能で撮影できる優れた能力をもちます。 口径4メートル以上の望遠鏡でこれだけ広い視野を一度に撮影できるものは、世界でも「すばる」だけです。 主焦点カメラはこの範囲を8000万個のCCDピクセルでカバーして、条件のよいときは0.3秒角の分解能を達成できます。

 主焦点カメラの開発グループは、装置の調整と並行して、宇宙の大規模構造の研究をおこなっています。この主焦点カメラにより2000年の6月から8月にかけてヘルクレス座の一部を撮影した画像から、これまで知られていなかった銀河団が発見したのです。 銀河団とは1000万光年程度の比較的狭い領域にたくさんの銀河が集まっている構造をいいます。 よく知られている銀河団としては、地球から5900万光年の距離に数100個の銀河が集まっている「おとめ座銀河団」があります。 これまでに全天で9700個にも達する銀河団のカタログが作られていますが、今回発見された銀河団はこのカタログには含まれず、数10個の銀河の集団が地球から約50億光年の距離にあるものと推定されています。 この発見は、「すばる望遠鏡」と、その主焦点カメラが期待通りの性能を発揮していることを示すものとして、11月14日に国立天文台から発表されました。

 これまで調整を続けていた「すばる望遠鏡」は、この12月から共同利用による本格運用に入ります。 これは全国の研究者から希望する観測計画を募集し、審査によってそこから採択された観測を実施していくものです。 2000年12月から2001年3月までの期間の応募は114件でした。 そのうち26件が採択され、12月4日から共同利用が開始されることになっています。 「すばる」望遠鏡がいよいよ本格的に動き出すときがきたのです。

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