[チャンドラ] 巨星の性質は案外太陽に似ている?

【2000年10月19日 CXC PR: 00-23 (2000.10.18)

NASAのX線宇宙望遠鏡「チャンドラ」による観測から、太陽の30倍以上の質量を持つ最大クラスの恒星であるO型星の表面に、私たちの太陽(G型星)に見られるような磁気ループ構造が存在するかもしれないということがわかった。『Astrophysical Journal Letters』誌に投稿された論文の共同執筆者のひとりであるWayne Waldron氏(Emergent Information Technologies社)によると、この発見はO型星の性質が私たちの太陽ととても似ているかもしれないということを暗示するもので、定説に反する驚くべき結果だという。

定説では、O型星からのX線放射は恒星風に伴なう衝撃のエネルギーに由来するものであり、我々の太陽と同様にコロナ(恒星の近傍に広がる超高温ガスの層)からの放射ではないとされてきた。しかし今回研究チームがチャンドラの高エネルギー放射格子分光器(HETGS)を用いて「オリオン座」の三ツ星のひとつ「オリオン座ζ(ゼータ)星」のスペクトルを観測した結果、X線を放射しているガスの密度は、放射源が恒星風であるとするモデルの予測する密度のおよそ1,000倍もの高密度であり、コロナの密度に近いことが判明した。また、恒星風モデルが必須としているスペクトル輝線間隔の伸びもみられなかった。

Waldron氏や、同じく共同執筆者のひとりであるJoseph Cassinelli氏(ウィスコンシン大学)によると、今回の観測結果は、X線の放射源が太陽にみられるような磁気ループ構造周辺の超高温プラズマであるとした場合にもっとも良く適合するという。

今後の課題は、O型星表面で磁気ループ構造がどのように生成されているかを説明することである。