VLT、これまでで最も遠くに出現した新星をとらえる

【2000年8月8日 ESO Press Release 17/00

ヨーロッパ南天天文台(ESO)の南米チリ北部のパラナル観測所の超大型望遠鏡(VLT)[*]が、7千万光年の彼方の銀河に出現した新星をとらえた。

VLT/ANTUのFORS-1カメラにより撮影されたNGC1316銀河

VLT/ANTUのFORS-1カメラにより撮影されたNGC1316銀河。B(青),V(緑〜黄),Iバンド(赤外)フィルターにより撮影された画像からカラー合成したもの。

Massimo Della Valle氏(イタリア・フィレンツェのOsservatorio Astrofisico di Arcetri所属)、Roberto Gilmozzi氏(ESO所属)、Rodolfo Viezzer氏(ESO所属)らからなる観測チームは、VLTの1号機「ANTU」とFORS-1カメラ(短焦点化レデューサー付き低散乱分光撮像機)を用い、2000年1月9日〜1月19日のうちの8晩、7千万光年の彼方の「ろ座銀河団」にある大型楕円銀河NGC1316を観測し、少なくとも4つの新星を発見した。

新星現象は、大型・低温の赤色矮星と小型・高密度・高温の白色矮星からなる2重連星において、赤色矮星から流出した物質が白色矮星の表面につもり、つもった物質がある量を超えたときに核融合爆発を起こす現象。このとき突然非常に明るく輝き、新たな星が出現したように見えるため、新星と呼ばれる。その後はたんだん暗くなり、やがてまたもとの明るさに戻る。繰り返し新星現象を起こすものもある。

NGC1316銀河に出現した新星NGC1316銀河に出現した新星

今回発見された新星のうちの2つ。VLT/ANTU、FORS-1カメラ、Bバンド(青)フィルターによる。画像左上は1月9日、右上は1月12日、左下は1月15日、右下は1月19日の撮影。徐々に減光していくようすがよくわかる。

新星はそれほど珍しい現象ではなく、銀河系内で発生した新星が肉眼で見えるぐらいの明るさになることも2〜3年に1度ぐらいある。しかし今回のように遠方の銀河で発生した新星が観測された例は少なく、今回の観測は新星の最遠観測記録を更新するものだ。8m級の新世代望遠鏡の実力がうかがえる。

今回、NGC1316銀河にはわずか11日間の観測で少なくとも4つの新星が発見されたが、この結果を元に推定すると、この銀河には年間およそ100個の新星が出現している計算になる。これは、我々の銀河系の3倍の頻度に相当する。これは、NGC1316が我々の銀河系とは異なるタイプの銀河であり、より多くの恒星を含んでいるということに原因の一部があると思われる。

なお、今回観測された新星はいずれも非常に淡く、最も明るい時で24等級程度、そして11日間の観測を通して25〜26等級まで暗くなった。これは、肉眼で観測可能な限界の明るさの1億分の1程度の明るさに過ぎない。これは、NGC1316がおよそ7千万光年の彼方にあるということが原因だ。

[*] 建設中のVLTは、口径8.2mの4基の大型望遠鏡を組み合わせて、16m級の望遠鏡に匹敵する性能を得ようとするもの。今年初めには3号機がファーストライト(初観測)を迎え、今年中には4号機もファーストライトを迎える予定になっている。


画像提供:  ESO