アメリカ天文学の10年計画

【2000年6月1日 国立天文台ニュース(352)

今後10年間に、天文学のどんな設備にお金を使うか。 その第一は口径8メートルの宇宙望遠鏡であり、第二は口径30メートルの地上望遠鏡である。 アメリカの天文学者が出した結論はこれでした。

天文学のどこにお金を使うべきか、アメリカ科学アカデミー(National Academy of Sciences)は、10年ごとにこの問題に対して答申をしてきました。 2001年から2010年の期間に対しては、カリフォルニア大学のマッキー(McKee; C.)とプリンストン大学のテイラー(Taylor; J.)の二人の司会によって、中心の委員会と9つの副討論会で1998年から討議がつづけられ、100人以上の天文学者による最終討論の結果が先月発表されたのです。

もっとも重要な設備としてまず挙げられたのが、次世代宇宙望遠鏡(Next Generation Space Telescope; NGST)です。 これはハッブル宇宙望遠鏡の後継機で、口径8メートル、160万キロの高度(月の4倍)で地球を周回し、ハッブルの数100倍の感度で、遠く、古い銀河などを観測するものです。 NASAは、ヨーロッパ宇宙機構(ESA)やカナダと協力して、2009年にこのNGSTの打ち上げを希望し、費用に10億ドルを見込んでいます。

第二が、口径30メートルの地上望遠鏡(Giant Segmented Mirror Telescope; GSMT)です。 口径は大きいものの、設計はハワイのケック望遠鏡とほぼ同じで、3億5000万ドルを見込んでいます。 ハッブル宇宙望遠鏡に対するケック望遠鏡のように、NGSTが捕らえた天体の分光をGMSTがおこなうといった形で、両者が補い合って、銀河の進化から系外惑星の捜索まで、広範囲の問題に対処することを予定しています。

その他、超新星のカタログ作りや、直径300メートルまでの地球接近天体の90パーセントの検出をおこなう大口径シノプティック・サーベイ望遠鏡(Large-Aperture Synoptic Survey Telescope; LSST,1億7500万ドル)、また南極サブミリ波望遠鏡(South Pole Submillmetre Telescope; SPST,5000万ドル)など、報告書には、全部で21項目にわたる、総計46億7000万ドルに上る設備が計上されています。 この答申は今後政府によって審議され、それに応じて予算が付けられことになります。 10年前の1991年からの10年計画では、大項目4つは全部認められ、中項目は11から9つが認められていますから、今回の答申は、今後10年間の天文学に大きな影響を与えると思われます。

参照Reichhardt, T., Nature 405, p.381-382(2000).
http://books.nap.edu/catalog/9839.html