小惑星アルバート(719)の再発見

【2000年5月11日 国立天文台ニュース(347)

行方不明であった小惑星アルバート(Albert 719)が発見されました。

キットピークでは、口径0.9メートルのスペースウォッチ望遠鏡により、地球接近小惑星などを捜索するためのスペースウォッチ・プログラムを実施しています。 その観測中にラーセン(Larsen, J.A.)は、5月1日、21.6等の明るさをもち、「おとめ座」と「しし座」の境界付近で異常な動きをする小惑星状天体を検出しました。 この天体は、続いて3日、6日にも観測されて、地球接近天体確認ページ(NEO Confirmation Page)に記載され、2000 JW8 の符号が付けられました。

この情報から、小惑星センターのウイリアムズ(Williams, G.V.)は、9日の観測も加えてその軌道を決定し、2000 JW8 が、89年間行方不明であった小惑星アルバート(719)であることを確認したのです。

小惑星アルバートは、1911年10月3日、オーストリアのパリサ(Palisa,J.)が発見しました。その名は当時ウィーン天文台の後援者であったアルバート(Albert Freiherr von Rothschild)を記念したものです。 当時、小惑星の名は女性名が原則で、トロヤ群の小惑星、あるいは特に地球に接近するなど、異常な軌道をもつ小惑星だけに男性名がつけられる習慣でした。 アルバートは、エロスなどと共に、男性名がつけられた数少ない小惑星のひとつでした。 しかし、アルバートはその衝のとき以後観測されず、番号が付けられた小惑星のなかで、ただひとつ行方不明とされていたものです。 今回の再発見で、番号が付いている小惑星に、行方不明のものはなくなりました。

そうはいっても、1万個以上もある番号が付けられた小惑星の中には、2回の衝のときしか観測されていないものが、アスクレピウス(4581)、1980 WF(4688)以下14個あり、その中には行方不明寸前のものもあります。 番号はついていませんが、1937年に地球に80万キロメートルにまで接近した小惑星ヘルメスも、その後観測されていません。 しかし、地球に衝突するおそれがある天体を検出するため、最近は非常に小惑星観測が強化されています。 アルバートが再発見されたのも、こうした観測網の充実によるものであることは間違いありません。 たとえ長期間観測されていない小惑星であっても、今後観測にかかってくる可能性は大きいと思われます。

参照IAUC 7420(May 9,2000).
MPEC 2000-J37(May 9,2000).