毛利シャトル連載第3回EarthKAMでシャトルに乗った気分に!

【2000年1月30日 2月13日更新

まず、前回の記事「毛利さんの乗るエンデバーを見つけてみよう」の作成後に、最新の解析によりシャトルの肉眼による観察が難しくなったことを、お伝えいたします。(宇宙開発事業団の発表ページより)
 ただし、このあと打ち上げが延期されたり軌道要素が変更になった場合には、シャトルが見えるようになる可能性もあります。最新情報に注目しましょう。

※ シャトルの打ち上げ日時が変更になったことにより、肉眼による観察が可能になりました。(2月13日UPDATE)

さて今回は、毛利さんの搭乗する今回のスペースシャトルのミッションでは、いったい何が行われるか? といった話題です。ミッションの中身を探ってみると、これがなかなかのものなのです。

今回のシャトルには主にふたつの任務が課されています。ひとつは主目的であるレーダーによる地形測量ミッション。もうひとつがシャトルに搭載するカメラによる教育プログラムです。
 まず最初は、わたしたちでもわかりやすい教育プログラムについてお話しましょう。

※ 前回の記事の中で、リンク漏れや表示が乱れる部分がありましたことをお詫び致します。

スペースシャトル・エンデバー
STS-99打ち上げ予定
(1月30日現在)

打ち上げ予定日時

2000年2月1日(火) 2:47 [日本時間]

ランチウインドウ

2時間02分

打ち上げ場所

ケネディ宇宙センター ランチバッド39A

軌道高度

233km

軌道傾斜角

53度

地球1周所要時間

約90分

ミッション内容

SRTMレーダー地形測量ミッション
EarthKAM教育プログラム

ライブサイト

NASA-TV中継サイト一覧

日本の中高校生も参加する EarthKAM教育プログラム

もし、スペースシャトルに乗ることができたら、シャトルから存分に地球を眺めてみたい、だれしもがそう思うことでしょう。そんな夢を実現できる気分になれるのが、このEarthKAM教育プログラムです。EarthKAMとは"Earth Knowledge Acquired by Middle School Students"の頭文字を取ったものです。

このプログラムを一言でいえば、シャトル打ち上げ後に取りつけられるカメラを地上から遠隔操作して、世界中のいろいろな場所の写真を撮影し、それを教育に役立てる、といった内容になります。つまり、シャトルの移動に合わせて地球のいたる場所を訪れ、ここぞと思う場所でシャッターを押すことができるのです(*)。シャッターを押すことができるのは、地上にてこのミッションに参加する、アメリカ・イタリアそして日本の中学・高校生たち。日本からも4校が参加します。

(*):実際には、あらかじめ撮影場所のリクエストを「撮影指示コマンド」として出しておき、リクエストに合わせて自動撮影されます。

そして、撮影された写真はシャトルが地球の夜の地域に入ったときに地上に送信され、撮影後数時間後に指定のWebサイトに公開されることになっています。

この公開された画像はインターネットを通じて世界中から見ることが可能です。ですので、シャッターを押すことはできませんが、刻々とアップされる最新画像を見ることによって、一般のわたしたちもこのミッションの成果をリアルタイムに近い形で体験することができるのです。

シャトル搭載カメラは、ニコンボディベースのコダックのデジカメ

ここで興味深いのは、EarthKAMプログラムで使われる撮影機材。撮影に使われるカメラはコダックのデジタルカメラDCS460です。このカメラは約620万画素のプロ用のデジカメとして1995年に一般に発売されたもので、その外観を見れば、このカメラを見たことがあるという人も多いでしょう。外観からわかるように、このカメラはニコンのN90s(F90sのアメリカでの名前)をベースにしてデジタルカメラ化したものです。ですので、その光学部分はニコンの一眼レフカメラと同じものとなっています。(宇宙開発事業団のページのシャトル搭載カメラの解説

また、このカメラに撮影指令を送るのは、IBMのノートパソコンThinkpad755Cで、撮影画像は260MBのPCMCIAのハードディスクカードに保存されます。これらもありふれた機材ですから、このページを読んでる方の中にも、同じものを持っている(いた?)方がいらっしゃるのではないでしょうか? このような、よく目にするような機材を使ってスペースシャトルからの写真が撮影されるのです。(宇宙開発事業団のページのシャトル搭載コンピュータの解説

このカメラは、シャトルのフライトデッキの頭上ウインドウに取り付けられ、シャトルから見てちょうど真下にあたる地点が撮影されます。DCS460には焦点距離50mmのレンズが取りつけられ、約130km×86kmの領域が一度に撮影できます。このデジカメは3060×2036画素ありますので、地上の約42mの大きさのものが識別できる計算になります。

EarthKAMのシステムの解説
宇宙開発事業団 - EarthKAMとは (ページ下方にEarthKAMの運用イメージがある)
宇宙開発事業団 - EarthKAM概要 (ページ中央にEarthKAMのカメラと写真の解説がある)

シャトルからの画像が公開される場所は? 過去に撮影された画像は?

 生徒の方がEarthKAMで撮影した写真は、数時間後にhttp://earthkam.sdsc.edu/cgi-bin/datasys/ks_newimageshttp://spaceflight.nasa.gov/gallery/index.htmlでで次々に公開されてゆきます。前者はEarthKAM開始後にアクセス可ですので、それまで待ちましょう。

また、EarthKAMプログラムはすでに4回行われており、その際に撮影された画像約2000枚がhttp://earthkam.sdsc.edu/で公開されています。そのページ右側の「geo.search」の部分をクリックし、地図上にプロットされた撮影地点をクリックすれば、過去にその地点でEarthKAMにより撮影された画像を見ることができます。この画面の日本語での説明はhttp://jem.tksc.nasda.go.jp/shuttle/sts99/earthkam_practical.htmlにあります(ページ下方の「6.3 これまでのスペースシャトルで撮影された写真を見よう」の部分)

シャトルからの画像が公開される場所
EarthKAM Datasystem (過去のEarthKAMにて撮影された画像)
- LATEST IMAGE PAGE (今回撮影の画像。EarthKAMプログラム開始後にアクセス可能)
NASAジョンソン宇宙センター - イメージギャラリー
  EarthKAMにより撮影された地点。日本付近を拡大

EarthKAM Datasystemのページにて、日本付近を拡大したのが上の画像。見ての通り日本の写真は約2000枚ある中で10数点しかなく、写っているのも雲ばかり。今回日本から参加する生徒の方にがんばってもらって、すばらしい写真を期待したいところです。

これまでにシャトルから撮影された、25万枚以上の写真が集まっているのはココ!

 EarthKAM以外でも、シャトルからは数多くの地球の写真が撮影されています。その数は、途方もなく膨大で、なんと250,000枚以上!! そのすべての画像が集められているのが以下のサイトです。そこには、右のようなすばらしい眺めの写真も数多く収められており、シャトルに乗っている気分に浸れます。撮影データや撮影コメントもきちんと整備されており、NASAの底力をひしひしと感じて、思わずうむむとうなってしまいます。ぜひぜひ一度訪れてみてください。
これまでシャトルから撮影された膨大な数の地球の画像の保管場所
Earth from Space -An Astronaut's views of the Home Planet
 これまでに撮影された250,000枚以上におよぶスペースシャトルの地球観測写真の中から選択された写真が、解説文とともに掲載されています。写真は、都市・天気・地形といった項目に分類され、目的の写真をいろいろな方法で探し出すことができます。
EARTH OBSERVATION COLLECTION
 スペースシャトルで宇宙飛行士が撮影した地球観測写真が、各フライトごとにまとめられています。250,000枚を越える写真が納めらています。
  シャトルから撮影された日本列島

Earth from Space -An Astronaut's views of the Home Planで見つけたシャトルから見た日本列島の写真。ふと思い出すと、SKYWATCHER1992年5月号や1998年12月号表紙の構図に似ている。今回のEarthKAMでは真下しか撮影しないので、このような斜め見の写真が無いのが惜しいところ。毛利さんが撮ってくれるといいのですけど。

EarthKAMは、建設中の国際宇宙ステーションでも実施される予定

以上のように書いてきましたEarthKAMプログラムが実施されるのは、現在はシャトルが飛行する期間に限られています。しかし将来的には、現在組立が進んでいる国際宇宙ステーションでも実施される予定があるそうです。
 そうなれば、日本の学校での教育活動に利用できる機会が大幅に増えることになるでしょう。この試みが定常的に行われるようになる日は、そんなに遠くのことではないかもしれません。

今回は以上です。次回は、今回のミッションの主目的であるレーダー地形測量ミッションはここがすごい!ということについて、お話したいと思います。

関連リンク
宇宙開発事業団 - EarthKAMとは
My Home Gallery - スペース・シャトルSTS-99特集ページ
NASA-TV中継サイト一覧
宇宙開発事業団 - STS-99 毛利宇宙飛行士、再び宇宙へ
横浜こども科学館 - 宇宙・天文ニュース - スペースシャトルの打ち上げ
倉敷科学センター - 毛利さんが搭乗するシャトルをみてみよう
AstroArts
天文ニュース
毛利氏搭乗エンデバー打ち上げは2000年1月25日に
打ち上げは2000年2月1日に変更されている(1月27日現在)
UPCOMING SPACE SHUTTLE LAUNCHES NASA Kennedy Space Center より)
ディスカバリー執念の打ち上げ成功HST修理へ
スペースシャトル・エンデバーの打ち上げ準備が整う
毛利宇宙飛行士との音声交信イベント
毛利シャトル連載
・ 毛利シャトル連載第1回 エンデバー打ち上げライブ中継を見てみよう
・ 毛利シャトル連載第2回 毛利さんの乗るエンデバーを見つけてみよう
・ 毛利シャトル連載第3回 EarthKAMでシャトルに乗った気分に!
・ 毛利シャトル連載第4回 レーダー地形測量ミッションはここがすごい!