2000年最初の流星群しぶんぎ座流星群を見よう

【1999年12月29日】

来年1月4日から5日の晩にかけて、“しぶんぎ座流星群”が見られます。“しぶんぎ座流星群”と言っても、よくご存知ない方が多いのではないでしょうか? たしかに、11月にヨーロッパで大出現したしし座流星群や、夏のペルセウス座流星群に比べれば、しぶんぎ座流星群は正直に言ってあまり有名ではありません。けれども、しぶんぎ座流星群は年間三大流星群に数えられる大流星群なのです。

ここでは、その知られざるしぶんぎ座流星群についてお話ししましょう。

● しぶんぎ座流星群は三大流星群のひとつ

それでは、しぶんぎ座流星群は、なぜ三大流星群に数えられているのでしょうか? それは、ずばり、流れる流星の数が多いからです。しぶんぎ座流星群は、6等星までみえる空の暗いところに行けば、1時間に50個近い流星が見られることもあります。毎年これほど多くの流星が流れるのは、ほかに8月のペルセウス座流星群と、このあいだの12月のふたご座流星群しかありません。
 ユーミンの歌にある10月のジャコビニ流星群や、有名になった11月のしし座流星群も、多くの流星を飛ばすことで知られています。しかし、それは母彗星が太陽に近づく13年に1度(ジャコビニ群)や、33年に1度(しし群)に限られてしまいます。
 ですので世界規模で見て、毎年コンスタントに数多くの流星が飛ぶのが見られる流星群として、しぶんぎ座流星群は、ペルセウス座流星群、ふたご座流星群とともに、三大流星群のひとつになっているのです。

● なぜ“しぶんぎ座流星群”という名前なの?

と、書いてきたしぶんぎ座流星群なのですが、ちょっと流星に興味が出てきた人には、“??? なんかヘンだゾ?”と思うところがあるかもしれません。それは、“しぶんぎ座”という名前です。8月のペルセウス座流星群も、12月のふたご座流星群も、それぞれ、“ペルセウス座”、“ふたご座”という名前の星座がちゃんとあります。けれども、“しぶんぎ座”なんていう名前の星座は、はたして、あったでしょうか?

いいえ、たしかにしぶんぎ座という星座は、今はありません。しかし、昔、現在の全天88星座が決まる前には、“壁面四分儀座(へきめんしぶんぎざ)”という古星座があったのです。
 しぶんぎ座流星群は、昔、壁面四分儀座とよばれる星座があったところから、放射状に流星が流れ出してくるように見えるので、“しぶんぎ座流星群”とよばれているのです。

壁面四分儀座は、現在のりゅう座の一角にあたる場所にありました。ですので、本来なら“りゅう座流星群”と呼ばれていいはずです。実際に“りゅう座ι(イオタ)流星群”と呼ばれることもあります。
 ですが、6月や10月にもりゅう座から流星が流れ出してくるように見える流星群があり、これとまぎらわしいことや、流星観測者の間では、しぶんぎ座流星群のほうがとおりが良いことから、現在でもしぶんぎ座流星群、略して、しぶんぎ群と呼ばれることが多いのです。

● しぶんぎ座流星群はいつ、どのように見える?

それでは、しぶんぎ座流星群は、いつどのように見るのがよいのでしょうか?

しぶんぎ座流星群の特徴に、出現数のピークが鋭いということがあります。ある程度の出現があるのは、極大日を挟んだ前後1日であり、活発な活動が見られるのは極大付近の数時間に限られます。しぶんぎ座流星群は、急にグッと流星が増えたかと思うと、しばらくの後に、ストンと数が減ってしまうのです。ですので、活発な出現をとらえるには、しぶんぎ座流星群のピークがいつくるか、正確に把握しておくことが大切でしょう。
 その問題の時刻ですが、しぶんぎ座流星群には、突発極大と通常極大のふたつのピークがあります。2000年はそれぞれ、1月4日14時30分ごろと1月4日20時ごろにあたります。したがって、おおよそこのピークを含む範囲の時間見ていれば、しぶんぎ座流星群の活発な出現を見逃すことはないでしょう。(下表参照)
 とはいえ、1月4日14時30分ごろの突発出現は日本では白昼ですし、同日20時ごろの通常極大の時間帯は、残念なことに東京ではしぶんぎ座流星群の放射点は地平線下になってしまいます。放射点が地上にある北海道でも数度の高さしかありません。ですので、今年は顕著な出現はあまり望めそうにありません。

  突発極大 通常極大
太陽黄経 283.16° 283.4°
日本時間 1月4日14時30分ごろ 1月4日20時ごろ
1時間あたりの
出現数予想
50程度 30程度

しかし、それほど悲観することもありません。数はそれほど望めないにしても、月齢条件が良いのです。月が出てくるのは明け方4時30分ごろ。それまでは、月に照らされることなく暗い夜空が続きます。この月が出ていないということは、暗い流星が多いしぶんぎ座流星群にとっては、重要なことです。ぜひとも空の暗い場所に出かけけて、空を眺めることをオススメしたいと思います。

以上をまとめますと、今年のしぶんぎ座流星群は、1月4日の日の沈む前の時間に空の暗い場所に到着し、空の暗くなってゆく時間から観測をはじめるのが良いでしょう。しし座流星群やふたご座流星群を見なれた目からすると、今年のしぶんぎ座流星群は数はそれほど望めませんが、空が暗くなった後には、この群を特徴づける、北天からの長大流星を主体とする雄大な眺めが見られるかもしれません。

● 寒いので、防寒をしっかり

しぶんぎ座流星群は、年間主要流星群の中で、もっとも寒い時期に見られる流星群です。とにかく寒いので、あらんかぎりの防寒装備をつぎ込み、最大の防寒体制でのぞみましょう。厚底の靴、厚手の靴下を履いて、防寒着は最初から全部着こむんでしまいしょう。

お天気のほうは、12月29日現在では、あいにく1月4〜5日の晩に日本列島を低気圧が通過する予報になっています。しかし、まだ時間はありますので、悲観せずとも良いでしょう。気温は平年並よりやや高めで、札幌上空約1500mの予想では、平年よりも5度高い値が出ています。寒いことには変わりありませんが、平年よりもちょっぴりあたたかいしぶんぎ座流星群になるかもしれません。

参考: スカイウオッチャー2000年1月号ウオッチャーズガイド内 流星観測ガイド
AstroArts: 1月4日 りゅう座ι流星群(四分儀群)が極大
  しし座流星群'99 特集ページ
  今晩極大ペルセウス座流星群のみかた