重力レンズ効果による系外惑星の発見

【1999年11月11日 国立天文台天文ニュース(306)】

これまでの系外惑星は、恒星の視線速度、あるいは固有運動を精密に観測することで発見されていました。 今回は、それとは全く別方法の、重力レンズ効果を利用して系外惑星を発見したことの報告です。

その原理をなるべく簡単に説明しましょう。 地球からある恒星を観測するとします。 この恒星を光源星ということにします。 その手前を別の恒星が通過すると考え、こちらをレンズ星と呼びます。 この場合、二星が離れているときは、地球からは二星の光量の和が観測できます。 しかし、この二星が見かけ上ごく接近すると、レンズ星の重力効果で光源星の光が曲げられ、レンズで光が集められる形になり、地球で受ける全光量が増えます。 したがって、時間を追って明るさを観測しますと、ある時点で急に明るさが増し、やがて、もとの明るさに戻ることになります。

ここで、レンズ星の周りを惑星が公転している場合には、その光度曲線の形が、惑星がない場合に比べて多少変形します。 その変形状況をうまく説明できるようなモデルをつくって、惑星の存在を推定するのです。

今回惑星発見を報告したのは、アメリカ、インディアナ州、ノートルダム大学のベネット(Bennett,D.P.)らのグループで、MACHO-97-BLG-41 と呼ばれる恒星を観測して発見したものです。 この恒星が重力レンズを構成していることは1997年に報告されていて、ひきつづき観測がおこなわれていました。 今回その解析結果が報告されたのです。

この解析は簡単ではありませんでした。 通常のレンズ系のモデルでは説明できなかったのです。 さまざまなモデルを当てはめ、試行錯誤の末に成功したのは、予想外の、連星の周りを公転する惑星のモデルでした。

最終的な解析結果によりますと、レンズ星は晩期K型わい星とM型わい星の連星で、約1.8天文単位離れています。 惑星は木星の約3倍の質量で、この連星の周りを約7天文単位離れて公転しています。 このように連星の周りを公転する惑星はこれまでには知られていません。 この形式の惑星は今回初めて確認されたものですが、銀河系の中には、おそらく他にも多数あるにちがいありません。

なお、MACHOはmassive compact halo objectsの頭文字をとったもので、銀河系のハロー部分にある、木星程度から太陽の数倍くらいまでの質量をもつ天体を意味します。

参照 Bennett,D.P. et al., Nature 402,p.57-59(1999).