いて座に今年2個目の新星が出現

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いて座に比較的明るい新星が発見された。8等級前後で、空の条件が良ければ双眼鏡でも見える。

【2021年4月8日 VSOLJニュース

著者:前原裕之さん(国立天文台)

天の川銀河の中心方向にあるいて座の中にはこれまでも多数の新星が発見されています。先月下旬にも新星(いて座V6594)が発見されたばかりですが、また新たな新星がいて座の中に発見されました。

新星を発見したのはオーストラリアのAndrew Pearceさんで、4月4.825日(世界時、以下同。日本時では5日4時48分ごろ)に焦点距離100mmのレンズとデジタルカメラで撮影した画像から8.4等の新天体を発見しました。

この天体はオーストラリアのMcNaughtさんが4.639日に撮影した画像にも8.9等で写っていたことがわかりました。明るい天体であったことから千葉県の清田誠一郎さんや山口県の吉本勝己さん、福井県の小林徹さんほか多数の観測者による観測報告がありました。発見後の詳しい観測によると、この天体の正確な位置は以下のとおりです。

赤経  17h58m16.06s
赤緯 -29°14′56.5″(2000年分点)

確認画像
確認画像(撮影:清田さん)

いて座の新星の位置
いて座の新星の位置。画像クリックで星図拡大(「ステラナビゲータ」で星図作成)

天体の分光観測は発見翌日の4月5.750日に岡山県の赤澤秀彦さんによって口径35cmの望遠鏡を用いて行われたほか、5.828日には京都大学岡山天文台の3.8mせいめい望遠鏡によっても行われ、スペクトルにP Cygプロファイルを持つHα輝線の他、P Cygプロファイルの吸収線成分と同じ速度(およそ1000km/秒)だけ青方偏移した一階電離した鉄の吸収線が見られることがわかりました。このような特徴から、この天体が古典新星であることが判明しました。

新星は4月5.8日(日本時では6日明け方)ごろには7.7-7.8等ほど、6.8日(同7日明け方)には8等ほどで観測され、口径5cm程度の双眼鏡があれば見ることができる明るさまで増光しています。