人工衛星とデブリで夜空の明るさは1割増

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地球周回軌道上の人工物による夜空への影響を統計的に見積もった結果、自然状態の10%以上も夜空が明るくなっている可能性が示された。

【2021年4月5日 王立天文学会

スロバキア科学アカデミーおよびコメンスキー大学のMiroslav Kocifajさんたちの研究チームは、地球周回軌道上の人工物が、これまで考えられていた以上に夜空を明るくしていると示唆する研究成果を発表した。

Kocifajさんたちによると、人工衛星やスペースデブリなどの反射光は、地球上の大部分で夜空の明るさを自然状態の10%以上明るくしていると推測されるという。これは1979年に国際天文学連合が定めた、天文台における光害の基準を上回る数値だ。

「研究の主な動機は、地球軌道上の天体といった地球外の要因でどれだけ夜空が明るくなりうるかを見積もることでした。夜空が明るくなるとしてもわずかだろうと考えていましたが、最初の推計値が驚くほど高いものだったため、すぐにその結果を報告しようと決めました」(Kocifajさん)。

過去の研究では個々の人工物が天体撮影に与える影響を見積もっていたが、Kocifajさんたちの研究はサイズや明るさの分布といった統計値を元に、全ての物体による寄与を初めて計算した。望遠鏡や高感度カメラであれば軌道上の物体を光の点としてとらえることができるが、人間の目のような低解像度の検出器は、いくつもの物体の影響が合わさることで夜空全体に明るさが広がっていると認識する。これにより、たとえ都市の光害を避けていたとしても、天の川などの淡い光がかき消されてしまう可能性がある。

地球を周回する人工天体が増えていること、特に「メガコンステレーション」と呼ばれる巨大な通信衛星網が進められていることについて、天文学者たちは憂慮の声を上げている。米・スペースX社のメガコンステレーション「スターリンク計画」が人工衛星の表面に黒色塗装を施して反射光を軽減させようとした(参照:「黒色塗料による人工衛星の減光、むりかぶし望遠鏡で検証」)ような努力の例もあるが、軌道上の物体が増えれば、いずれにせよ地球上の多くの人々が見上げる夜空の変化は避けられなくなる。

研究チームではこの研究が、地球周辺の宇宙空間の利用に関して人工衛星の運用側と天文学者との間で続いている対話に変化をもたらすことを期待している。

ネオワイズ彗星とスターリンク衛星群の光跡
ネオワイズ彗星(C/2020 F3)とスターリンク衛星群の光跡(撮影:@mosschさん)。画像クリックで天体写真ギャラリーのページ

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