オシリス・レックス、5月にベンヌを出発
【2021年2月3日 NASA】
2018年10月に小惑星ベンヌに到達したNASAの探査機オシリス・レックスは、5月10日に帰還の旅を始めることになった。当初の予定では3月に出発することになっていたが、5月にすることで燃料の消費を最小限に抑えられるほか、4月はじめにベンヌへ約3kmの距離まで接近する機会が得られる見込みだ。
ベンヌを出発するオシリス・レックスの想像図(提供:NASA/Goddard/University of Arizona)
ベンヌへの最後のフライバイでは、昨年10月にオシリス・レックスがタッチダウンした地点「ナイチンゲール」をもう一度観測することが計画されている。ロボットアームの先端をベンヌの表面に接地させる「タッチ・アンド・ゴー(Touch-and-Go; TAG)」によるサンプルの採取やベンヌから離脱するためのエンジン噴射で、地表がどれだけ変形したのか調べるのが狙いである。
「オシリス・レックスからは、すでに驚くべき科学的成果が得られています。TAGによって表面がどうなったかに関する情報を取得して、ミッションにふさわしいベンヌとのお別れができそうです」(NASA惑星科学部門 Lori Glazeさん)。
最後のフライバイは、カメラや分光器、レーザー高度計といった観測機器の状態を確認する機会でもある。サンプル採取の際に舞い上がった塵が機器に付着して影響を与えている可能性もあるからだ。オシリス・レックスは2023年9月24日に地球へサンプルが入ったカプセルを届けた後、さらに別の天体へ向かうこともありうる。観測機器のチェックは、延長ミッションの可否を占うためのものでもある。
関連記事
- 2023/11/15 リュウグウ試料に水循環で生じたクロム同位体不均質が存在
- 2023/11/07 探査機「ルーシー」が最初の目標小惑星に接近、衛星を発見
- 2023/10/18 オシリス・レックスのカプセルを開封、試料から炭素・水の証拠
- 2023/10/16 金属小惑星を目指す探査機「サイキ」打ち上げ成功
- 2023/09/25 探査機「オシリス・レックス」地球帰還、小惑星ベンヌの試料入りカプセルを届ける
- 2023/08/23 2023年8月30日 フローラがみずがめ座で衝
- 2023/07/26 「はやぶさ2」が次に目指す小惑星、イトカワと類似
- 2023/07/19 リュウグウの炭酸塩に、母天体が独特な環境で進化した形跡
- 2023/06/23 探査機「ベピコロンボ」が3回目の水星フライバイ
- 2023/04/25 リュウグウ粒子に残る、穏やかな天体衝突の記録
- 2023/04/06 リュウグウでアミノ酸が生成された痕跡
- 2023/03/29 小惑星リュウグウに核酸塩基とビタミンが存在、過去には水による変性も
- 2023/03/29 小惑星表面の粒子は予想外にくっつきにくい
- 2023/01/31 イトカワは衝撃を吸収する大きなクッション
- 2023/01/25 リュウグウの炭酸塩は太陽系誕生の180万年後にできた
- 2022/12/26 小惑星リュウグウは彗星と同郷か
- 2022/12/26 2023年1月3日 パラスがおおいぬ座で衝
- 2022/12/19 地球質量の5%は太陽系外縁で生まれたリュウグウ的物質
- 2022/11/30 小惑星の雪崩がコマの形を作る
- 2022/11/07 新鮮な小惑星表面、10年間で日焼けせず