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小惑星1997 XF11(続報)

国立天文台・天文ニュース (164)


【1998年3月14日 国立天文台天文ニュース

2028年に小惑星1997 XF11が地球に非常に近づくことは、天文ニュース(162)でお知らせしたとおりです。 最悪の場合には地球に衝突するかもしれないと取り沙汰もされて、一般の話題にもなりました。 そして、軌道確定のために今後の観測の重要性が指摘され、一方、過去にこの小惑星が観測されていないかの調査もなされました。

 その結果、ジェット推進研究所のヘリン(Helin,E.F.)らが、1990年3月22日にこの小惑星を観測していたことがわかりました。 パロマー山の口径46センチのシュミット望遠鏡で撮影したフィルムに、この天体が17.3等の明るさで写っていたのです。 この発見によって、これまで88日しかなかった観測期間が一挙に8年に延び、軌道決定の精度が大きく向上しました。

 再計算された軌道では、2028年の接近は10月26.3日(世界時)に起こり、最接近距離は0.0064天文単位となりました。 これは約96万キロメートルに当たり、月の2倍余りの距離になります。 計算誤差を考慮しても、もう地球に衝突する心配はありません。

軌道図

 ごく大ざっぱな推定ですが、明るさからみて、この小惑星は直径1マイル(1.6キロメートル)程度の大きさと見積もられます。 最接近時には、6等級くらいの明るさで、数時間くらい肉眼で見える可能性もあります。 ただし、日本では昼間の時間帯ですから、直接に見るためには、アメリカかヨーロッパへ行く必要がありそうです。

 国際天文学連合回報(IAUC 6839)による、1997 XF11 の軌道要素はつぎのとおりです。

近日点通過時刻=1997 July 1.1954TT近日点引数=102.4645
離 心 率 =0.483775 昇交点黄経=214.1319(2000.0)
近日点距離 =0.744247 AU 軌道傾斜角= 4.0948
長 半 径 =1.441710 AU 公転周期 = 1.731年
平 均 運 動 =0.5693602 /日

 なお、この天体は、1957年には0.015天文単位に、また1971年には0.032天文単位にま で接近していたはずです。

参照 IAUC 6839(Mar.12,1998).

Marseden,B.G.,Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics, Press Information Sheet(Mar.11,1998).

    1998年3月19日         国立天文台・広報普及室



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