地震や磁場など、火星探査機インサイトの初期成果を発表

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2018年11月に火星に着陸した探査機「インサイト」の、これまでの探査による初期成果が発表された。

【2020年3月3日 NASA JPL

2018年5月に打ち上げられたNASAの火星探査機「インサイト」は、2018年11月に火星の赤道付近にあるエリシウム平原地域の「ホームステッド」と呼ばれる浅いクレーターに着陸した。これまでの約1年の探査によって次々と新たな知見が得られており、「火震」(火星の地震)、塵、奇妙な磁気パルスなどについての研究が論文として発表されている。

火星を探査するインサイト
火星を探査する「インサイト」の想像イラスト(提供:IPGP/Nicolas Sarter)

内部構造

インサイトは史上初めての、火星の内部構造を調べることを目的とした探査機だ。メインの測定機器である高精度の火星地震計「SEIS」では2019年4月に初めて火震が検出された(参照:「インサイトが「火震」らしい信号を初検出」)。火震を測定することによって、火星の内部構造の組成について知ることができる。これは地球を含む岩石惑星がどのように形成されたかを明らかにすることにもつながる。

火震は予想よりも頻繁に起こっており、2019年末までに1日あたりおよそ2回の火震が検出されている。これまでにSEISで検出された震動は450回以上にのぼる。2018年11月に着陸してから最初の火震を検知するまでには数か月要したのは、着陸した時期はたまたま火震が起こらない穏やかな時期だったのだろう。

火星には地球のように地震活動を起こすプレートはないが、火震を引き起こす可能性のある火山活動領域は存在する。そのような領域の一つ「ケルベロス地溝帯」は、崖の側面から振り落とされたらしい岩塊が見られる場所で、あるときに検出されたペアの火震と強い関連がある領域と考えられている。ケルベロス地溝帯では大昔の洪水によって長さ約1300kmにわたる溝が作られ、そこに溶岩流が流れこんだとみられているが、その溶岩流には200万年以内に火震によって破壊された証拠が示されている。「これは火星で最も若い構造的特徴です。この領域で火震の証拠が見られるという事実は驚くことではありませんが、非常にクールです」(米・NASA JPL Matt Golombekさん)。

ケルベロス地溝帯
NASAの火星探査機「マーズ・リコナサンス・オービター」に搭載されたカメラ「HiRISE」で撮影されたケルベロス地溝帯(提供:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)

磁場

インサイトに搭載された磁力計により、着陸地点での局地的な磁場がこれまでの予測よりおよそ10倍強いことが示された。

火星には数十億年前には磁場があったが、現在は存在していない。しかし磁場は、地下に埋もれた古い岩には残された。インサイト周辺の地表の岩のほとんどは年代が若く磁化されていないと考えられるので、インサイトが検出した局所磁場は地下の岩に由来するものとみられる。「探査データを地震学・地質学から得た情報と組み合わせて、インサイトの下の磁気層がどのくらい強く、深いのかを明らかにします」(加・ブリティッシュコロンビア大学 Catherine Johnsonさん)。

また、インサイトが検出する磁気シグナルの強さは昼と夜とで異なっており、真夜中ころ脈動することも明らかになった。原因はまだわかっていないが、可能性の一つとして、火星の大気と相互作用する太陽風に関連していることが考えられる。

インサイトは火星の風速、風向、気圧をほぼ連続的に測定し、地表付近の大気が渦巻状に立ち上る突風の一種である「塵旋風」と呼ばれる数千もの旋風を検出している。「インサイトの着陸地点では、これまでに他の火星探査機が着陸したどの場所よりも多くの旋風が起こっています」(仏・ソルボンヌ大学 Aymeric Spigaさん)。

このように旋風は頻繁に起こっているにもかかわらず、インサイトのカメラではとらえられていない。しかし、SEISはこの旋風が巨大な掃除機のように火星の表面を引っ張っているのを検知している。「旋風は地下の火震探査に最適です」(仏・パリ天体物理学研究所 Philippe Lognonnéさん)。


このほか、インサイトには火星の自転に伴うふらつきを電波で調べて火星の核が固体か液体かを調べる装置や、熱流量測定装置などが備えられている。今後の探査によって火星や岩石惑星について新発見がもたらされ、研究が進展することが期待される。

火星の地下構造と探査を示したイラスト
火星の地下構造と探査を示したイラスト(提供:J.T. Keane/Nature Geoscience)

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