ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したボリソフ彗星

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ハッブル宇宙望遠鏡が鮮明にとらえた、観測史上2例目の恒星間天体であるボリソフ彗星の画像が公開された。

【2019年10月23日 HubbleSiteヨーロッパ宇宙機関

ボリソフ彗星(2I/Borisov)は今年8月に発見されたばかりの新天体だ。その運動の様子から、ボリソフ彗星は太陽系外からやってきて太陽系外に去っていく恒星間天体であることがわかっている。2017年に発見されたオウムアムアに次ぐ、観測史上2つ目の恒星間天体である。

ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が10月12日に撮影したボリソフ彗星の画像には、氷の核を取り巻いて塵が集まっている様子や、彗星らしく尾が伸びている様子が鮮明にとらえられている。撮影時にボリソフ彗星は地球から約4億km離れており、時速約17万kmで動いていた。

ボリソフ彗星
ボリソフ彗星(提供:NASA, ESA, and D. Jewitt (University of California, Los Angeles))

「岩石質とみられるオウムアムアに対して、ボリソフ彗星は活動が活発で、普通の彗星のようです。2つの恒星間天体がこれほど違う理由はわかりません」(米・カリフォルニア大学ロサンゼルス校 David Jewittさん)。

ボリソフ彗星のように他の恒星からやってきた彗星は、その恒星系における惑星の材料の化学組成や構造、塵の特徴などに関する貴重な手がかりを提供してくれる。「他の恒星系と太陽系とはかなり異なる可能性もありますが、ボリソフ彗星の特徴は太陽系のものと、とてもよく似ています。大いに注目すべき点です」(米・宇宙望遠鏡科学研究所 Amaya Moro-Martinさん)。

太陽系内の彗星の起源は、海王星の外側に円盤状に広がる「エッジワース・カイパーベルト」や、さらにその外側に球殻上に広がっているとされる「オールトの雲」だと考えられており、これらの領域にある凍った小天体が太陽系の内側に入り込んでくると彗星として観測される。また、太陽以外の星の周りにも氷や塵の円盤が観測されており、何らかの理由でそこから弾き飛ばされたものが太陽系にやってくると、オウムアムアやボリソフ彗星のような恒星間天体として観測されることになる。こうした天体は実はもっと多い可能性もあるが、ほとんどは暗すぎるために見つかっていないのかもしれない。

ボリソフ彗星は12月上旬に太陽に約3億kmまで最接近し、12月下旬から来年1月上旬に地球から3億kmの距離を通過していく。この前後の期間にはHSTを含めた複数の望遠鏡が向けられ、アマチュア天文家たちも熱心に観察を試みるだろう。「新しい彗星は常に予測不可能です。初めて太陽に接近して強力な熱にさらされた彗星は、突然明るくなったりバラバラに崩壊したりすることもあります。いずれにせよ、その一部始終はハッブルの高性能を活かしてつぶさにとらえられるでしょう」(米・宇宙望遠鏡科学研究所 Max Mutchlerさん)。

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