微小重力実験で宇宙ダストの生成を再現

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NASAの観測ロケットを用いた微小重力実験により、高温のガスからケイ酸塩宇宙ダストを模擬した微粒子が生成、成長する過程が測定された。宇宙における物質進化の理解につながる成果である。

【2019年10月11日 北海道大学

太陽系の固体材料でもある微粒子「宇宙ダスト」は、宇宙でエネルギーのやり取りを担い、星の形成効率を上げる働きがある。また、宇宙ダストの表面は分子形成の場として使われ、生成した分子と共に惑星系の材料にもなるなど、宇宙において大きな役割を果たしている。宇宙ダストは天体から放出されるガスから生成されるが、その生成の初期条件が不確かなため、組成やサイズ、質量などに関する理解は不十分だ。

北海道大学の木村勇気さんたちの国際研究チームでは10月7日に、NASAの観測ロケット「Black Brant IX 343号機」を用いた微小重力実験プロジェクト「DUST」を実施し、宇宙ダストの一種である酸化物微粒子の中で最も主要なケイ酸塩(シリケイト)に焦点を当てる実験を行った。ケイ酸塩は宇宙の至る所に存在しており、地球型惑星の主要な構成鉱物の一つである。

観測ロケットとスタッフ
打ち上げを待つ観測ロケット「Black Brant IX 343号機」とスタッフ(提供:北海道大学リリースより、以下同)

これまでに木村さんたちは、2012年にJAXAの観測ロケットを用いた実験から金属鉄微粒子の生成過程を、今年6月にスウェーデン宇宙公社の観測ロケットを用いた実験から炭素質微粒子の生成過程を調べてきた。今回の実験は、ケイ酸塩鉱物がガスから微粒子へと成長する過程におけるデータの取得を目的としている。

ロケットは高度約340kmに到達し、約460秒の微小重力環境時間を実現して、ケイ酸塩微粒子の生成過程の理解に最も重要な表面自由エネルギーと付着確率を求めるために必要なデータが取得された。

宇宙ダストが生成する様子
打ち上げから約127秒後の、装置内でケイ酸塩の蒸気から宇宙ダストが生成する様子。(左)二波長干渉縞画像。干渉縞の変化からダスト生成時の温度と濃度が決定できる。(右)可視光線画像。中心で光っている部分が星に相当し、そこから発生する蒸気から微粒子(宇宙ダストの類似物)が生成されている

これまでの実験を通じて、金属微粒子、炭素質微粒子、酸化物微粒子の生成過程に関するデータを蓄積することができた。また、別種の宇宙ダストである氷微粒子の生成過程の解明を目指して、北海道大樹町から打ち上げられる観測ロケット「MOMO」を用いた微小重力実験の実施も計画されている。

これらの実験結果の分析から、宇宙物質の生成過程の統一的な理解が進み、物質進化の謎が解明されると期待される。小惑星探査機「はやぶさ2」が持ち帰る試料にはケイ酸塩微粒子を含む宇宙ダストが多量に含まれていると期待されており、今回の実験で生成された微粒子と比較することで、太陽系内における物質進化の理解も進むだろう。