長周期変光星の周りのガス分布を高精度に観測

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VERAと野辺山45m電波望遠鏡を組み合わせた観測から、4つの長周期変光星の周りに広がる一酸化ケイ素ガスの分布が明らかにされ、その物理環境の多様性が示された。

【2019年2月21日 国立天文台VERA

数百日の周期で明るさが変化する長周期変光星の周囲には一酸化ケイ素ガスが分布しており、そこからは複数の周波数帯で電波が放射されている。その原因は、放射1(42.820582 GHz)と放射2(42.519340 GHz)の空間分布が一致する場合は、水分子からの中間赤外線放射がきっかけで、一致しない場合は水分子と一酸化ケイ素が衝突することによるものだ。

鹿児島大学の親泊美哉子さんたちの研究チームは2012年3月と5月に、国立天文台の電波望遠鏡ネットワーク「VERA」と国立天文台野辺山宇宙電波観測所の45m電波望遠鏡を組み合わせて12個の長周期変光星を観測し、4天体についてガスの空間分布を得ることに成功した。

4つの長周期変光星
PanSTARRSプロジェクトによる、4つの長周期変光星の可視光線画像。左上から時計回りに、「ケフェウス座T星(T Cep)」、「うみへび座W星(W Hya)」、「しし座R星(R Leo)」、「うお座WX星(WX Psc)」(提供:PanSTARRS, Université de Strasbourg/CNRS 1999-2017 - distributed under GPL V3)

4天体の内、ケフェウス座T星(T Cep)では、放射1と放射2の分布がよく一致していた。一方、残りの3天体では両者が離れて分布しており、長周期変光星の物理環境の多様性が明らかになった。

一酸化ケイ素ガスの空間分布
一酸化ケイ素ガスの空間分布(順番は1枚目と同じ)。緑色の等高線が放射1の分布、赤色の等高線が放射2の分布。円状の破線は、恒星を中心に一酸化ケイ素ガスが対称的に分布することを仮定して描かれた線(提供:Oyadomari et al. 2018より)

同じ長周期変光星の中で、放射1と放射2の空間分布に違いが出た理由については、変光星の明るさが変動する段階の違いが主要因として考えられているが、現段階では観測数が不足しているため断定はできない。親泊さんたちは2017年にもVERAと野辺山45m電波望遠鏡による継続観測を行っており、これによって様々な変光段階における観測結果が得られる見込みだ。明るさの周期変動との関係が詳しくわかることが期待される。