キュリオシティが来た道は、意外に低密度の地だった

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火星探査車「キュリオシティ」が数年にわたって走行してきたシャープ山のふもとが、意外に密度の低い場所であることがわかった。クレーターの中央にあるこの山がどのように出来たのかを探るヒントになる成果だ。

【2019年2月1日 NASA

2012年から火星の赤道付近で活動中の探査車「キュリオシティ」は、直径154kmのゲール・クレーターの中心にある高さ5000mのシャープ山の裾野を2014年から登り続け、その途上で地表の撮影や岩石の掘削分析など様々な調査を行っている。

そのキュリオシティに搭載された加速度計のデータから、シャープ山の生成の謎に関する興味深い発見がもたらされた。2012年から2017年にかけて取得した700回の計測結果から、キュリオシティが地表から受ける重力が予想以上に小さいことがわかったのだ。これは、これまで辿ってきたシャープ山の裾野地域の密度が1立方mあたり1.5t~1.8t程度と予想以上に低いことを意味する。

ゲール・クレーターとシャープ山
ゲール・クレーターの中央にそびえるシャープ山。キュリオシティは右下の水色の線から登ってきた(提供:NASA/JPL-Caltech/ESA/DLR/FU Berlin/MSSS)

シャープ山は、もともとゲール・クレーターを覆っていた堆積物が長年の侵食作用で削られて形成された、という説があるが、その堆積物がどのくらいの量だったかはわかっていない。もし堆積物がクレーターいっぱいまで埋まるほどなら、大量の物質に圧縮されて密度が高くなるはずであり、今回のようなデータにならない。米・ジョンズホプキンス大学のKevin Lewisさんらによれば、この地を覆っていたのはせいぜい1、2kmの厚みの堆積物と推算されるという。

火星有数の巨大な山にはこの他にも多くの謎が秘められているようだ。キュリオシティは山のふもとから350mほど登った北側の尾根「ヴェラ・ルービン・リッジ」に2017年9月から滞在していたが、今月から尾根を南側に下って粘土鉱物の多い場所に向かい、かつてその場所にあったとされる湖の痕跡を探る。

キュリオシティの自撮り画像
1年半滞在した「ヴェラ・ルービン・リッジ」の風景を背にしたキュリオシティの自撮り画像。1月15日撮影(提供:NASA/JPL-Caltech)

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