アルマ望遠鏡がシャープにとらえた惑星誕生20の現場

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アルマ望遠鏡による高解像度の観測で、20万歳から1300万歳と非常に若い星を取り巻く塵の原始惑星系円盤が鮮明にとらえられた。

【2018年12月13日 アルマ望遠鏡

米・ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのSean Andrewsさんたちの研究チームがアルマ望遠鏡を使って、惑星系誕生現場の大規模な観測計画「DSHARP(Disk Substructures at High Angular Resolution Project: 高解像度による原始惑星系円盤構造観測プロジェクト)」を実施した。

このプロジェクトでは、太陽系近傍の20個の若い星を取り囲む塵の円盤(原始惑星系円盤)が高解像度で観測された。原始惑星系円盤の構造や、その中で惑星が誕生するのにかかる時間など、惑星系誕生に関わる様々な情報を得ることが目的だ。これまでのアルマ望遠鏡での観測でも円盤が高精細にとらえられていたが、その構造や成因が一般的か例外的かを明らかにするため、多くの円盤の観測が必要とされてきた。

20の原始惑星系円盤
20の原始惑星系円盤。多重構造を持つもの、環の一部が明るいもの、渦巻き模様のもの、連星系それぞれに円盤が存在するもの(一番右上)、など非常に多様性がある。画像クリックで表示拡大(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), S. Andrews et al.; NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello)

観測された20の円盤には、ほぼすべてに同心円の隙間構造や細いリング構造が見られる。隙間やリングの大きさは様々で、中心の星から数天文単位(1天文単位=約1.5億km)のところにあるものから、100天文単位(太陽から海王星の約3倍)以上遠い場所にあるものまで見つかった。また、一部の円盤には渦巻構造や三日月状の構造も見られる。

「DSHARPが目指したのは、原始惑星系円盤に見られる構造上の類似点と相違点を探すことでした。様々な質量の若い星で、その周りの円盤の詳細な構造をはっきりと描き出すことができました。非常にバラエティーに富んだ細かい構造は、私たちが直接姿を見ることのできない惑星と円盤内の物質との相互作用によるものと解釈しています」(Andrewsさん)。

2014年にアルマ望遠鏡がおうし座HL星の原始惑星系円盤を高解像度でとらえたとき、この円盤は知られている中でも非常に明るく重いものだったので、これが平均的な惑星誕生現場の姿であるかどうか断言できませんでした。DSHARPの観測を通して、おうし座HL星が特別変わった星ではないこと、むしろ一般的な惑星の誕生現場であるかもしれないということがわかったのです」(チリ大学 Laura Perezさん)。

標準的なシナリオでは、星を取り巻く原始惑星系円盤の中で小さな塵やガスが次第に集まって惑星が形成されると考えられている。マイクロメートルサイズの塵が合体して小石、岩、…と大きくなっていき、最終的に惑星となるというシナリオだ。こうした段階的な成長には数百万年かかると考えられている。

もし惑星の誕生に長い時間がかかるとすれば、今回観測されたような構造は、より進化した原始惑星系円盤の中で見つかるはずだ。しかし、今回観測された天体の年齢はおよそ20万歳から1300万歳の範囲である。今回の観測結果は、若い段階にある原始惑星系円盤でも惑星が存在することを示唆するものと考えられる。

DSHARPで写し出された円盤内の隙間やリング構造は、地球のような岩石質の惑星がどのようにして作られ成長していくのかという謎に迫るヒントにもなる。惑星形成の理論によれば、塵が合体して直径1cm程度の大きさになると、周囲のガスとの摩擦で公転の勢いが失われて中心の星に落下してしまうため、火星や金星や地球のような惑星形成に必要な物質の獲得が起こらないという問題が指摘されていた。今回のアルマ望遠鏡による観測で見えてきた高密度の塵のリングは、塵が長期間安定して成長できる場所かもしれない。

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