重力波源とガンマ線バーストは親戚かもしれない

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2015年1月に観測されたガンマ線バースト「GRB150101B」の残光が、2017年8月に検出された重力波「GW170817」の残光とよく似ていることがわかった。これら2つは同じ種類の天体現象かもしれない。

【2018年10月23日 NASA

2015年1月、NASAのガンマ線天文衛星「フェルミ」が、ガンマ線バースト「GRB150101B」を検出した。この現象について、NASAゴダード宇宙飛行センターのEleonora Trojaさんたちの研究チームは、検出時の観測データやその後にガンマ線以外の波長で行われた追観測のデータを調べた。すると、2017年に電磁波での残光が初めて観測された重力波源「GW170817」とGRB150101Bとの間に類似点があることが明らかになり、まったく別々に見えるこれら2つの現象が、実は「親戚同士」の天体である可能性が出てきた。

ガンマ線バースト「GRB150101B」
ガンマ線バースト「GRB150101B」の検出位置にある楕円銀河をハッブル宇宙望遠鏡で撮影した可視光線画像。右上の2枚の画像は、X線天文衛星チャンドラが2015年1月9日と同年2月10日に撮影した「GRB150101B」のX線残光。楕円銀河を囲む枠線がチャンドラのX線画像の写野を示している(提供:NASA/STScI / NASA/CXC/GSFC/UMC/E. Troja et al.)

Trojaさんらによると、GW170817とGRB150101Bの観測データは驚くほど一致しているという。どちらの現象でも、きわめて暗く継続時間の短いガンマ線バーストが発生し、その後に青色の明るい可視光線の放射が数日続き、X線の放射がさらに長く続いた。また、ハッブル宇宙望遠鏡とディスカバリーチャンネル望遠鏡による観測から、これらの現象が検出された母銀河も非常に似ていることがわかっている。どちらも数十億歳程度の星からなる明るい楕円銀河で、新たな星が生まれている兆候がないという特徴がある。

また、GW170817とGRB150101Bのどちらも、X線の増光が他の多くのガンマ線バーストに比べてゆるやかだった。このことは、バーストで放出されたジェットが地球の方向からずれていたことを示唆している。このようにジェットの向きが地球からずれている短時間ガンマ線バーストが検出されたのは、GRB150101が2例目だ。

「この2つの天体はいわば『宇宙のそっくりさん』です。見た目やふるまい、その発生元の銀河も似ています。2つは同じ天体の一族に属しているというのが最もシンプルな解釈です」(米・メリーランド大学カレッジパーク校 Geoffrey Ryanさん)。

研究チームでは、GW170817とGRB150101Bは実は同じタイプの現象から生じたものである可能性が高いと考えており、次のようなモデルを考えている。「2個の中性子星が合体して、重力波を放出するとともに高エネルギー粒子の細いジェットが作られる。このジェットから、数秒間だけ続く強力なガンマ線のバーストが生み出され、これが短時間ガンマ線バーストとして観測される」というものだ。

GRB150101Bで見られた可視光線の残光は青色の光が大部分を占めている。これは、GW170817の場合と同様に、いわゆる「キロノバ」という現象がこのバーストに関わっていることを示す重要な証拠となっている。キロノバは新星と超新星の中間の明るさで輝く強力な爆発で、莫大なエネルギーを放出するだけでなく、金・白金・ウランのような、他の爆発現象では作られない元素を生み出す。

ただし、GW170817とGRB150101Bには多くの共通点がある一方で、重要な違いが2つある。一つは現象が発生した場所だ。GW170817は地球から約1億3000万光年の距離で発生したが、GRB150101Bが起こったのは地球から17億光年も離れた場所だ。仮に2015年初めに重力波検出器「LIGO」が稼動していたとしても、これほど遠いとGRB150101Bからの重力波を検出することは不可能だっただろう。

もう一つの重要な違いは、GRB150101Bからは重力波が検出されていないため、合体した2つの天体の質量がわからないことだ。合体したのは中性子星同士ではなく、ブラックホールと中性子星だった可能性もある。「中性子星とブラックホールの合体例を発見するためには、GW170817のように重力波と電磁波の両方のデータを組み合わせられる検出例がもっと必要です。私たちの研究成果は、より多くの合体現象を見つけて中性子星とブラックホールの合体をも検出しようという動きにはずみをつけるものとなるでしょう」(英・バース大学 Hendrik Van Eertenさん)。

「GW170817の素晴らしい点は、この現象が様々な波長で見せる一連の特徴を私たちに教えてくれたことです。このおかげで、同種の現象がLIGOで重力波を検出できないほど遠くで起こったとしても、これらの特徴から遺伝子マーカーのように、その現象が同じ爆発現象の仲間であることを判定できます」(イタリア国立宇宙物理学研究所 Luigi Piroさん)。

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