太陽のような恒星の自転パターンを初計測

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質量や年齢が太陽と似た恒星の観測から、これらの星の自転速度は太陽と同様に、緯度の高いところよりも赤道のほうが速いことが明らかになった。ただし太陽とは異なり、赤道付近の速度は中緯度に比べて2.5倍も大きいようだ。

【2018年9月27日 NYU Abu Dhabi

太陽の自転周期は、赤道付近では約25日だが緯度が高くなるにつれて長くなり、極付近では約30日となる。つまり、赤道付近の自転速度は緯度の高いところよりも速い。これは太陽が流体(気体)であるために起こる現象で、このように緯度によって速度が異なる回転を差動回転(微分回転)と呼ぶ。

太陽と似たような恒星も同じように差動回転しているはずだが、従来は赤道付近が高緯度部分よりも速いということしかわかっておらず、詳細は不明だった。

米・ニューヨーク大学アブダビ校宇宙科学センターのOthman Benomarさんたちの研究チームは、NASAの系外惑星探査衛星「ケプラー」の観測データと、星の内部を伝わる音波から構造を星の調べる「星震学」の手法を利用して、質量と年齢が太陽に似た13個の恒星の自転を正確に測定した。

その結果、これらの恒星の赤道領域が中緯度領域の約2.5倍の速さで回転していることが初めて明らかになった。赤道領域が速いという点では太陽と同じだが、太陽の赤道の自転は1割ほど速いだけであり、この点で観測された星とは大きな違いがある。「予測外の結果です。数値シミュレーションによれば、こうした恒星がこれほど大きな差動回転を維持することはできないと考えられており、理論の正当性が問われることになります」(Benomarさん)。

太陽のような恒星の自転の様子
緯度によって自転速度が異なることを示したイラスト。青い矢印が長いほど速い(提供:MPI for Solar System Research/MarkGarlick.com)

太陽の自転は太陽の磁場を発生させるうえで決定的な役割を果たしていると考えられており、熱心に観測や研究が行われてきたが、その詳細はまだはっきりわかっていない。太陽の磁場は大規模な太陽嵐を引き起こすことが知られており、しばしば人工衛星に障害を発生させたり、地球の送電線にダメージを与えたりするため、磁場発生の仕組みを理解することは生活においても極めて重要となる。

「恒星の自転と磁場の生成についての理解が進めば、磁場を生み出す物理的プロセスである、太陽のダイナモ機構に関する情報を得るうえで、大いに役立つでしょう」(同センター Katepalli Sreenivasanさん)。

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